2013年7月14日日曜日

蘇州夜曲 昭和15年 李香蘭と東京ローズ 

最近、仲間が中国の蘇州へ旅行した。蘇州は上海の西に位置する古都で、「水の都」「東洋のベニス」ともいわれている。景色はすばらしいし、ホテルにはちゃんと日本人と見れば美人が寄ってきて「チップください」ということでいろいろな特別サービスもあったそうだ。

蘇州といえば「蘇州夜曲」で、「蘇州夜曲」といえば日中混血の美女「李香蘭」である。
昭和15年(1940)に公開された日中合作映画「支那の夜」の中で李香蘭が歌ったのが「蘇州夜曲」である。この映画は国策映画であり、戦後は映画の名前も変わり、いまはもう公開されることもないそうだ。

[[item(http://www.youtube.com/v/w0ht7Wkkc3s&rel=1,425,350)]]
李香蘭の名前を聞くと、東京ローズというアメリカ日系二世の女性を思い出す。若い頃「東京ローズ(Tokyo Rose)」という英語の本を必死になって読んで国籍とは、愛国心とはなんだろうといろいろと考えたことがあった。
"Tokyo Rose" Orphan of the Pacific, Masayo Duus 
(Introducntion by Edwin O. Reischauer)

東京ローズ(IVA TOGURI、戸栗)は大学生のとき、米国カルフォルニアから両親の国である日本へ来たが日米開戦により米国へ帰れなくなった。米国市民である独身女性は生活のため、NHKの海外向け謀略短波放送(ゼロアワー)の女性アナウンサーとして生きていく。同じ謀略放送に加担したほとんどの二世たちは特高警察から日本に帰化することを強制され、仕方なく日本へ帰化した。彼女は、米国人であることの誇りを持ち、最後まで日本には帰化しなかった。そして東京ローズの甘い声は連合軍兵士の間で人気となり「厭戦気分」にさせた。
Iva Toguri signs on as "Orphan Ann" , during her "Music for You" segment of Radio Tokyo's "The Zero Hour". 
http://www.earthstation1.com/Orphan_Ann/Orphan_Ann_Sign-on_01a.wav

終戦後、東京ローズはGHQによる戦犯容疑で巣鴨プリズンに投獄された。アメリカ帰国後、米国市民でありながら、日本に協力した反逆罪で禁固10年、罰金一万ドル、米国市民権の剥奪となった。1977年にフォード大統領による恩赦が出たことによりアメリカの市民権を回復したが、罪が消えたわけでない。

単なる一市民がアメリカへの忠誠心、愛国心のために米国市民権を捨てなかった。また、生活のために対連合国軍向けプロパガンダ放送のアナウンサーとなった。そして、アメリカの歴史に名を残す反逆者になってしまった。

一方、日本国籍になった二世たちは強制されて帰化したのだからと、また米国市民権を回復することができたし、謀略放送への参加は日本人としての行為として罪は問われなかった。

「中国も日本も大好きです」という混血の美女、李香蘭も戦後、売国奴(漢奸)として裁かれるかに見えたが、実はハーフというのは全くのうそで完全なる日本人(山口淑子)であった。
流暢な中国語にだまされた中国人が悪いのであって、日本人だから国策映画に出て日本に好意的な発言をするのは当たりまえだったのだ。中国外へ追放はできても反逆罪で罰することはできなかった。李香蘭は中国人のように振舞い、国策を推進して人気を得た後、敗戦で不利だと見ると戸籍で日本人であることを証明した。

晩年の東京ローズは、困難な時にも米国籍を捨てようとしなかった「愛国的市民」として退役軍人会に表彰されたりもされた。

そのほかにも、たまたま日本へ帰っていた日系二世男子は「実はアメリカ国籍です」ともいえず徴兵され日本軍として戦った二重国籍者もいた。彼らは、戦後、日本の軍歴があるため、なかなか両親のいるアメリカへの帰国が許されなかったそうである。

一市民である東京ローズや李香蘭の事件で、国家とは、愛国心とは何か、正義とは何かを考えさせられた。難しい問題ですが皆さんなら若き書生としてどういう行動をとるでしょうか。

彼女たちは何のためにどういう思いで働いたのでしょうか。
「お国のため、自分のため、答えは風の中?」

<蘇州夜曲>
君がみ胸に抱かれて聞くは  夢の船歌 恋の唄(映画では「鳥の唄」)
水の蘇州の花散る春を    惜しむか柳がすすり泣く 

髪にかざろか接吻(くちづけ)しよか  君が手折(たお)りし桃の花 
涙ぐむよなおぼろの月に    鐘が鳴ります寒山寺(かんざんじ)


硬派の書生節演歌師だけでなく、ダンスホールやカフェでアルバイトをする軟派の書生もいたに違いない。


「東京ローズ」ゆかりの店に幕=人柄しのび、惜しむ声も-米

 【シカゴ時事】第2次大戦中に対米宣伝放送に携わり、「東京ローズ」と呼ばれた故アイバ・戸栗・ダキノさんが、米シカゴで切り盛りしていた日本雑貨店「戸栗商事社」が1月に閉店することが関係者の話で分かった。アイバさんは日米のはざまで波瀾(はらん)万丈の生涯を送り、2006年に他界。そのゆかりの場所だけに、生前に交流があった人からは惜しむ声が上がっている。

 日系2世のアイバさんは1941年、親類を見舞うために来日。開戦を理由に帰国できず、ラジオのアナウンサーとして対米宣伝放送に従事した。戦時中には日本政府からの国籍取得要請を拒み、米国への忠誠心を持ち続けた。戦後、米国に戻ったが、国家反逆罪で6年以上服役し、長年にわたり「反逆者」扱いを受けた。

 関係者によると、閉店する戸栗商事社はアイバさんが父から事業を引き継ぎ、現在親族が経営している。(2012/12/28-14:56)
写真の店は故アイバ・戸栗・ダキノさんがかつて切り盛りした日本雑貨店(米国、シカゴ)

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